府中市寿町で心臓病児のための私設保育園を開いている会社役員山上稔さん(46)、昭恵さん(44)夫婦が、ハンデを持つ子のたくましい成長を願って、子供向けの絵本を自費出版した。
題名は、園の名前と同じ「そらとぶペンギン」。いじめられっ子のペンギンが困難を乗り越え、夢を実現する姿をほのぼのと描いている。十年前、先天性心臓病のため、六歳で世を去った長女・温子ちゃんの懸命に生きる姿を見て以来、長年温めてきた物語だ。
温子ちゃんは生後間もなく、心筋の収縮が弱く心不全のような状態が続く難病と診断された。入退院を繰り返すなか、四か月余に過ぎなかったが幼稚園にも通った。そこで多くを学び、習ったお遊戯などを楽しそうに両親に披露した。
こうした経験から、「病気で幼稚園に通えない子にも、その雰囲気を」と、97年6月、保育士資格をもつ昭恵さんを中心に「ペンギン」を開設した。
絵本を作ったのは、懸命に生きることの大切さを分りやすく伝えようと考えたから。稔さんが文章を、やはり幼くして息子を亡くした友人が絵を担当した。南の島を舞台に、主人公の泳げないペンギンの子「ピンチ」が、海より広い空へ羽ばたくことを願い、やがて天使の助けも借りて、空を飛べるようになる・・・・・・という物語。その姿は、小さな翼で何とか飛び立とうとする病気の子であり、現代を生きる「普通の人々」のようでもあり、様々に受け止めることができる。
対象年齢は二歳から小学校低学年程度。稔さんは「病気など肉体的に劣る面がある子も、心まで劣ってはいない。絵本から支え合うことの大切さ、どんなことがあってもくじけない、あきらめないことの大切さを読みとってもらえれば」と話している。
税別千二百円。売り上げは保育園の運営費に充てられる。 |